雑 感

一期 内野 滋雄    

 私達一期生は、昭和二十三年三月、東京都立高等学校尋常科三年を修了し、同年四月、東京都立大学附属高等学校一年生に編入した。この年が新制の都大附高のスタートの年である。

 世相はまだまだ暗かった。日本人に服装はボロに近く、進駐軍の払い下げ品を着ている者はいい方だった。よく電車の中に武装したMPが入ってきて見廻っていた。

 ある時、ボロをまとい子供を背負った婦人にアメリカ兵が近づき、百円を子供に渡していた。婦人は何遍も頭を下げていたが、いずれは子供からこの金を取りあげるだろうと、やりきれいない思いをしたこともあった。

 銀座、渋谷などの盛り場には、パンパンがアメリカ兵と腕を組んで得意そうに歩いていたし、浮浪者も多かった。数寄屋橋のたもとの乞食がわずかな落花生を大事そうに握っていた。帰って子供にでもやるのだろうか。その時、「乞食の手のひらにしめる落花生」という句が自然に出た。

 学制が変り、新制高校が生まれ、私達もいやおうなしに新しい制度の中に組み込まれていった。

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